片・すぐお腹痛くなる。

まだ生きていたのか?!

日記24

 10代の頃に比べると読書量が格段に落ちている自覚はあるけれど、購入する本の量は10代の頃と同量かむしろ増えているので、必然的に読まれぬまま積まれる本ばかりが増えてゆくのです。一時、積読本を消化するまで本を買わないというのはどうだろうと試した時期があったものの、積読本が一定の冊数にまで減ると、そこから読書への意欲そのものが消滅し、積読本は減らない、本は読まないという膠着状態に陥ることが判明したので、諦めて本をどしどし買うことにしたのです。この場合の一定の冊数であるところの60冊の積読本を、私はきっと一生読まないでしょう。一生読まないとわかっていて、手放しもしないでしょう。私の妹さんは、買った洋服を一度も着ずにタグをつけたまま未使用品として売却することがよくあるそうなのです。でも私には、買ったまま読まない本をそのまま手放すというのは、なんとなく気の引ける行為なのです。
 そろそろ「今年買って良かった本2022」でどの本を紹介しようかとぼんやり選書をし始める時期なのだけれど、今年買ったものの読めていない本の中に、是非とも紹介したいような本がないとも限らないので、まずは読むことだと自分に言い聞かせているのです。今は『アシェンデン』を読んでいるのです。これを読もうと思ったのは、私の敬愛する津村記久子氏が『やりなおし世界文学』(これも読了できていないのです)の中で取り上げていて、それとなく気に留めていたことに加えて、先日読んで大変気に入った『ヨーロッパ・イン・オータム』がイギリス人作家の書いたスパイもの(正確にはスパイではないのですが)だったことから、同じくイギリス人作家のスパイものである『アシェンデン』も私の好みに合うだろうと推断してのことでしたが、予想に違わず面白い本なのです。ほんとうは津村記久子が取り上げていたちくま文庫版を読みたかったのですが、新刊書店での入手がむずかしいので、新潮文庫版と岩波文庫版の序文を読み比べて、岩波文庫を選びました。どちらが良いという話ではなく、自分が読んで心地よいと感じるかどうかという話なのです。今読んでいるところまでで判る範囲で言うと、アシェンデンは嫌な事態を想像して心臓がドキドキしているときに好奇心から脈を測ってみるような男で、スパイ行為にワクワク、ドキドキを求めていて、退屈してくるとちょっとしたゲームを思いついて、それを監視役や上役から咎められたりしているのです。私はアシェンデンみたいな人間が大好きです。ちょっとしたことを自分なりに楽しくやろうとして余計なことをするなと怒られているような人間だとか、人を食ったような態度だったり皮肉を言ったりしながらも人並みにナーバスになったり心配性だったり抜けているところがあるような人間が好きです。『ヨーロッパ・イン・オータム』の主人公ルディにも通じるところがあるような気がします。ともかく今は『アシェンデン』を早いところ読み終わって「今年買って良かった本2022」に入れてしまおうと思うのです。